気象・海象

気象・海象について基礎的な知識や用語についてご紹介します。

気象・海象の基礎知識

小型のボートにとっては、岸から離れた場所で強風や高波に襲われてしまったら転覆・沈没などの恐れがあります。

近年では、気象衛星の発達などで、かなり狭い範囲の正確な天気予報を知る事もできるようになりましたが、それでも100%の精度というわけにはいきません。

ボートに乗って海に出ていく以上は、「船長」としての責任として最低限の気象・海象知識を習得しておかなければなりません。

また、天気予報を見たり聞いたり、天気図を見たりした際にも、ここで学んだ知識があると、より興味を持って見る事ができるようになります。

気象用語の解説

気圧

大気の重さによる地表面の圧力の事で、単位はヘクトパスカルで表します。

気温と気圧の関係

高気圧・低気圧の接近などの影響とは関係なく気温が下がると空気は収縮されて気圧は上がり、気温が高くなると空気は膨張して気圧は下がります。
逆の言い方をすると、高気圧は周囲よりも気温の低い場所で発生し、低気圧は周囲よりも気温の高い場所で発生すると言えます。

等圧線

同じ気圧の地点を結んだ線で、山の高さを表す「等高線」と同じような図となります。

気圧傾度

2地点間の気圧の差を2地点間の距離で割ったもので、気圧傾度が大きい(距離が短く気圧差が大きい)ほど風は強く吹きます。
気圧傾度が大きい所=等圧線が込み合っている場所は風が強い、等圧線が離れている場所では風は弱いという事が言えます。
これは、川の水の流れの速さと同じ事で、距離が短く高さの差が大きい(つまり急斜面)場所では、川の水は速く流れる、という事と同様です。

風向

風が吹いてくる方向を示します。北風というのは北から南に空気が動く(風が吹く)事を指します。

風速

1秒間に空気の流れる距離(メートル)を10分間の平均で表します。
風は気圧の高い所から気圧の低い所に向かって空気が流れる事を指し、風速の強さは10分間の平均値で示します。

高気圧

周囲よりも気圧が高い所の事で、北半球では右回り(時計回り)に下降気流が吹き出し、南半球では左回り(反時計回り)に風が吹き出し、高気圧の範囲内にある場所では天気は良くなります。

低気圧

周囲より気圧の低い場所の事で、周囲よりも暖かい気温の場所で発生するため、上昇気流が起こり、北半球では左回りに低気圧に向かって空気が吹き込みながら上昇し、南半球では右回りに空気が中心に向かって吹きこむ流れとなります。
北半球と南半球で吹き込む風の回転方向が異なるのは地球が回転(自転)しているためで、詳細の説明は省略しますが、地球の自転によって「コリオリの力」と呼ばれる見かけの力が発生する事で、回転方向が北・南半球で変わるのです。

低気圧はなぜ天気が悪くなる?

標高の高い所は気温が低い、という事はご存じだと思います。
次に、暑い日に冷たく冷えた飲み物をグラスに注ぐとグラスの回りに水滴が付く事も経験があると思います。
これは、グラスの周囲の空気が冷たいグラスに触れて急激に冷やされる事によって、飽和水蒸気(空気中に溶け込める水分の限度を越え、水蒸気の状態から水滴になってしまう)となり、これを大気に置き換えると、飽和水蒸気状態とは「雲」の発生や「雨」となる訳です。
低気圧の上昇気流によって、地表の大気が上空に持ちあげられる=冷やされると、地表付近では暖かい温度の中で空気中に溶け込んでいた水分が、「飽和水蒸気」状態となり、雲の発生、雨を降らせる=天気が悪くなる、という事になります。

高気圧はなぜ天気が良くなる?

低気圧と全く逆の現象が起き、上空で湿度の高い空気であっても、高気圧の下降気流で地表へ降りてきた空気は温度が高いため空気の中に溶け込める水分量が増えるため、飽和水蒸気の状態から、安定した(乾燥した)空気となるため「晴れ」となります。

熱帯低気圧

熱帯エリアで発生した低気圧の内、風力8(風速17.2m/s)以上に発達したものを熱帯低気圧と呼びます。
熱帯低気圧は発生場所毎に「台風typhoon」「ハリケーンhurricane」「サイクロンcyclone」と呼ばれます。

  1. 台風 typhoon
    東経180度以西の北太平洋で発生
  2. ハリケーン hurricane
    東経180度以東の北太平洋、北大西洋・カリブ海・メキシコ湾、南太平洋のオーストラリア東方から西経130度付近までの海上で発生
  3. サイクロン cyclone
    インド洋、アラビア海、ベンガル湾で発生

熱帯低気圧の発生要因

  • 一般的に海面温度が26.5℃以上の海域で発生します。南大西洋では熱帯低気圧が発生しませんが、それはこの海面の温度が低い事が要因です。
  • 赤道から有る程度離れており、地球の自転の偏向力が影響する場所で、そのため赤道の南北5度以内では発生しません。
  • 水蒸気を多量に供給される、周囲に比べ湿度が高い場所で発生するため、陸上で発生はしません
  • 上空に行くに従い風速が強くなるような場所では、上昇した暖かい空気が拡散してしまう為発生しにくくなります。
  • 大気の状態が不安定な場所で発生します。

この様に、熱帯低気圧が発生する場所やメカニズムはかなり詳細に分っています。また、熱帯低気圧の進路は有る程度予測もつきますので、熱帯低気圧が発生したら、その進路情報なども入手し、猛烈な風・波を引き起こす熱帯低気圧の影響のある海面に出て行くような事は避けなければなりません。

波の解説

波の測り方

波は単に「高さ」だけでなく、「長さ」も重要な要素です。
高さ3メートルの波、と言うと小型ボートにとっては非常に大きな波ですが、波長が100メートルで波高が3メートルであれば全く走行に問題の無い波ですし、例えば波高が3メートルで波長が5メートルであれば非常に切り立った波で危険な波という事が言えます。

波の観測

サーフィンをする方は詳しいと思いますが、海岸で波を見ていると、通常は50~60センチ程度の波でも1メートルを超えるような波が来る事があります。
波の大きさは一定ではなく、100回に3回程度は他の波よりも大きな波が来ます。
小型のボートでは、50センチ程度の波ではさほど危険ではないでしょうが、1メートルの波となると真横からもろにこの波を受けると転覆の危険もあるでしょう。
たまたまこの大きな波が来た時に波に対してボートが横を向いた姿勢であれば大変です。
海上に出たら、常に周囲の波の様子を観測しておくように心がけましょう。

波の高くなる場所

波は一定方向のみに進むのではなく、地形によって進行方向は変化します。
岬に波が当たる時の波の進行方向の変化を解説します。
波は「湾」の様に入口から奥が広くなっている場所では拡散(広がる)性質を持っており、逆に岬の先端などの尖った場所に近づくと先端部分に集中する性質を持っています。
岬などの先端部分が危険、と言われるのはこの様な波の性質に基づいています。

向い波の操船ポイント

波へ向かって航行する「向い波」時の操船は、波に対して20°~30°の角度で航行します。進路が目的地からずれる場合は、波の小さい時を見計らって逆方向の20~30°の角度に変針します。

また、航行するスピードは速すぎるとそのまま艇体がジャンプして大変危険です。逆に遅すぎると波を昇ることができませんので、波に負けない(昇ることができる)スピードで航行しましょう。

向い波を乗り越える際のポイントは、波を乗り越える直前にスピードアップ(増速)、波の頂上まできたらスピードダウン(減速)を繰り返して航行します。

追い波の操船ポイント

逆に、波に追いかけられながら航行する「追い波」時のポイントは、前の波の背にはりつくように、波と同じスピードに調整しながら航行しましょう。波のスピードより遅いと、波が大きい場合は船尾をもっていかれて横倒しになり、時に転覆する可能性があります(ブローチング現象)。

船尾から抵抗物を流して「追い波」をやり過ごす方法もありますが、スピードの速い小型ボートでは波に追い越される場合は少ないため、実際には使用するケースはほとんどありませんが、エンジン不調等でスピードが出ない場合の応急処置として覚えておきましょう。

ボートで海に出れば、波の全く無い、という日はまれな事でしょう。
単に波の大きさ(高さ)だけでなく、波の進んでいる方向や地形との関係など、ボートで海に出る際には、漠然と過ごすのではなく、常に波の観察を行っておく事が重要です。
波というボートにとって最も危険な自然環境をいかに自分の感覚に取り込めるかは、船長としての大きな力量の差となりますので、しっかりと身につけておきましょう。

潮汐

海面は太陽と月の引力の作用で引っ張られる事で盛り上がります(満潮)。太陽と月が一直線の状態(満月・新月)の状態の時には、引力の方向が一直線上にあるため、引っ張られている所と引っ張られていな所の差が大きい状態(大潮)となり、太陽と月が直角状態である時には、引っ張られる方向が太陽の方向と月の方向に分散されるため、干満の差が小さい状態(小潮)となります。
また、地球自身が24時間で一回転しているため、約6時間毎に満潮・干潮を繰り返します。

大潮

月が太陽の側に有る時(新月)は引力の方向が同じとなるため干満の差の大きな日「大潮」となります。

月と太陽が反対方向(満月)の時も、引力の方向は一直線上のため、干満の差が大きな「大潮」となります。

小潮

月が半月(上弦)の時は、太陽と月が違う方向に引っ張る状態のため干満の差が小さい「小潮」となります。

月が半月(下弦)の時も上弦の月と同じ事で、干満の差が小さい「小潮」となります。

地球上で最も干満の差が大きな場所では、大潮の時には満潮時と干潮時の海面の高さの差が16メートルにも達する場所があります。

潮汐と潮流

潮汐で海面が盛り上がる・下がる動きは、内海(湾などの陸地に囲まれた海面)よりも外海(太平洋・大西洋・インド洋などの大きな海)の方がその影響を大きく・早く受けるため例えば、干潮から満潮に向う時には、外海が先に海面が上昇し、湾の入り口から海水が湾の中に流れ込み、湾の中は徐々に海面が上昇していく、という動きになります。

この様に、潮汐によって海水が流れる事を「潮流」と呼びます。

内海が大きい程外海から流れ込む海水の量は多くなり、内海と外海の接続場所(海峡・湾口)が狭いほど潮流の速さは早くなります。

また、大潮の時は干満の差が大きいため、潮流も早くなり、世界的に潮汐の最も早い場所では、20ノット近くの大変早い流れになる場所もあります。

このため、エンジン馬力が小さく、速力の遅い船などでは、潮流が治まるまで海峡等の手前で潮待ちをしたりするなどの影響を及ぼします。

また、潮流の激しい場所では、海底の形状によっては渦流となって小型のボートにとっては非常に危険な状態になる場所もありますので、十分に注意が必要です。

干潮~満潮に向かう潮流(上げ潮流)

図の様に、外海で盛り上がった(上昇した)海水は湾口に集まり、湾口から湾内に流入します。

奥行きが長い湾だと、湾の入り口付近と最奥部では満潮の時間が数時間も異なる(奥の部分が遅れた時間になる)場合もありますので、満潮・干潮時間の基点がどこになっているのかを知っておかないと、干満への対応方法を間違ってしまう場合もありますので十分に注意して下さい。

満潮~干潮に向かう潮流(下げ潮流)

上げ潮流と全く逆で、外海では干潮で海面が下がっているのに、湾内では依然として海面が高い場合には、湾口から外に海水が出で行く流れ(下げ潮流)となります。

川の河口部分で波が大きくなるのと同様、下げ潮流時の湾口では海水の流れと波がぶつかり合う形となるため、波が盛り上がった状態となり、非常に大きな波を発生させます。

小型ボートが河口付近を航行する時に大きな波がそこだけ発生しているのに注意しなければならないのと同様、下げ潮流時の湾口付近を航行する際には十分に注意して航行するようにしましょう。

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