離着岸について

さまざまな離着岸の方法についてご紹介します。

着岸方法について

一般的な桟橋への着岸方法

  1. 桟橋への進入角度20~30度で着岸地点に微速で接近する
  2. 着岸地点の10メートル程度手前でエンジンを中立にし、ハンドルを桟橋の反対側(図の場合は右)に切り、惰性で着岸地点に進む
  3. 桟橋に近づいたらハンドルを戻し、着岸地点まで来たら行き足(前進の惰力)を止める程度に後進に入れ完全に行き足を止める

桟橋の着岸スペースが無い場合や、桟橋側からの風が強い場合の着岸方法

桟橋側からの風が強い場合に、一般的な着岸方法をとると③の段階で風に流されて桟橋から離れて行ってしまいます。
着岸する地点の前後に他船が居る場合には一般的桟橋への進入角度で入ってこようとすると他船Bが邪魔になりますし、桟橋側からの強い風が吹いている場合などでは、浅い進入角度で微速で航行していては風で流されて桟橋に近づく事ができませんので、この様な場合には通常の倍くらいの進入角度で着岸地点にゆっくりと接近し(上図①)桟橋にぶつからないように速度を調整しながら、まずバウだけを接近させ、バウロープを繋ぎ留めます。(上図②)バウロープを係留したら、ハンドルを桟橋側に目一杯切り(上図の場合は左に一杯切る)エンジンを後進に掛け、船尾が桟橋に近づくのを待ちます。
②の段階で後進を掛けると、桟橋と船体が擦れ合って上図の場合には船首左舷側を傷つける恐れがありますので、大きめのフェンダーを船首左舷側に用意する事も忘れてはなりません。

スラスターを活用した着岸

大型のモーターボートなどでは、少人数での着岸・離岸などの為に「スラスター」と呼ばれる装置を装着するボートが見受けられます。

一般的にはバウ側のみの設置が多い様ですが、ここでは、バウ・スターン双方にスラスターを装着した艇を例に解説していきます。

スラスターはボートの真横方面に推力を発生させる装置で、バウスラスターを左方向に作動させると、図の様に右舷方向への推力を発生し、船首が右へ回転します。

次に、バウ・スターンのスラスターを同時に使用すると、図の様に、前後共に左側への推力を発生させる事ができるため、ボートは真横に進む事が可能となります。

スラスターを装着したボートは桟橋への進入角度などはあまり気にせずに接近し、着岸地点の真横で横にスライドさせるような着岸方法も可能となります。

桟橋に並行した風や流れがある場合の着岸方法

後ろ側からの風や流れの場合には、図の様に着岸地点の沖合で一旦行き足を止め、ハンドルを桟橋側に切り後進を掛け、船尾を桟橋に近づけ、船尾から係留する、という方法を取ります。

桟橋に向かった風・流れが有る場合の着岸方法

沖から桟橋に向かって風や流れがある場合には、着岸そのものは風・流れで自然に桟橋に近づくため非常に楽ですが、係留中に風・流れから発生する波でボートが傷ついてしまう恐れがあります。そのため、桟橋の沖側にアンカーを打つ、という着岸方法を行っておけば、ボートの損傷を防ぐ効果と、離岸時に容易に出航していける、というメリットがあります。

  1. 桟橋からボートの全長の5倍程度の間隔を開けて着岸地点の沖に進む
  2. 着岸地点の沖でアンカーを投入する

通常アンカーにはアンカーロープを1本しか付けないが、2本付けておけば、図のようにボートが船首・船尾共桟橋にぶつからないような係留が可能になる。

着岸時のクルーの役割

船長にとって、クルーの手助けが必要になるのは、何と言っても「着岸」時です。
港に入り着岸しようとしてもフェンダーも係留ロープも用意されていない状態では船長は不安で桟橋に近づく事も出来なくなってしまいます。
クルーとしては、船長に「どこに係留しますか?」「どちらの舷を着けますか」などの確認を行い、船長の意向にそった準備・行動がとれるようにしましょう。

着岸する舷側のバウロープ・スターンロープを準備します。
ロープを桟橋に係留した時に、ロープがハンドレールの上にならないように、ハンドレールの上を交わした状態にし、ロープの端をクリートなどに止めていつでもロープを出せるように準備しておきます。

フェンダーを用意します。着岸する桟橋・岸壁の高さを見て、フェンダーの位置を見極めて取り付けるのがポイントです。
着岸側の舷側に、取り付け位置の前後・上下のバランスを考え取り付けます。

クルーは桟橋に近づいたら係留ロープを持って桟橋・岸壁に飛び移るのが一般的ですが、桟橋までの距離や桟橋の高さなどを十分に見極め、絶対に飛び移れる、という状態・位置から飛び移りましょう。
いい所を見せようとして絶対に無理をしないで下さい。

桟橋・岸壁側に他のスタッフが居る場合には、その方にロープを渡し、係留をお願いする、というのもクルーの大切な仕事です。
この時、ロープがハンドレールの上を交差していないか、ロープの端はしっかりとクリートなどに留まっているか、などのチェックもお忘れなく。

桟橋・岸壁側までの距離が遠い場合には、ボートフックなどでボートを桟橋に引き寄せ、安全に飛び移れる、もしくは、桟橋に居る人にロープが渡せる距離までボートを近づける手助けをします。

離岸方法について

前進離岸

  1. 全ての係船ロープを外し、ボートを桟橋から押し出し、ハンドルを桟橋の反対側に切ってエンジンを前進に入れます。
  2. この時、ハンドルを切ったまま前進をすると船尾がハンドルを切った方向の逆の方向に振り出される動き(キック)により、船尾が桟橋にぶつかってしまいます。
  3. 船尾と桟橋の距離を確認しながら、ハンドルを少し桟橋方向に戻したりしながら徐々に桟橋から離れていきます。
  4. 桟橋から十分に距離が離れたらハンドルを徐々に中立に戻し⑤そのまま桟橋から離れていきます。

後進離岸

  1. 全ての係船ロープを外し、ボートを桟橋から押し出し、ハンドルを桟橋の反対側に切ってエンジンを後進に入れますが、前進の時とは違って、今度は船首がハンドルを切った側と反対に振れてします。
  2. 船首が桟橋にぶつからない様に注意しながらハンドルを戻したりしながら後進します。
  3. ハンドルを左に切ったり、戻したりを繰り返しながら、船首の桟橋への接近に気を配りながら後進していきます。
  4. 桟橋との距離が十分離れたらハンドルを左に一杯に切り、一気に桟橋との角度を付けます。
  5. ハンドルを中立に戻し桟橋から真直ぐに後進します。

沖側から風や流れがある場合の離岸方法

桟橋の沖側から強い風や流れが有る場合には、前ページの離岸方法ではいつまでたっても桟橋から離れて行くことは出来ません。
その場合は、係船ロープの中の「バックスプリング」を活用した離岸方法のテクニックを使います。

  1. 通常の係船ロープの内、バックスプリング(図赤線)と桟橋の付近にフェンダーを出来るだけ沢山準備し、バックスプリング以外のロープを取り外します。
  1. 次に、ハンドルを桟橋側(右)に目一杯切り、エンジンを前進に入れます。
    すると、ボートは前に出る力と右に曲がろうとする力が働きますが、バックスプリングが留められているため前に進む事ができず、前には行かずに船尾が左方向に振り出される動きとなります。
    この時、右舷船首部分が桟橋に押しつけられる形になりますので、この部分にフェンダーをしっかり当て、艇体が傷つかない様に注意します。
  1. 桟橋とボートの角度が十分に開いたら、ハンドルを中立に戻し、バックスプリングを一気に外し、エンジンを後進に切り替え、後進で桟橋から素早く遠ざかります。

このように、バックスプリングを上手に使用する事で、風や流れで桟橋から離れ難い状況から簡単に離岸する事ができるようになります。

離岸時のクルーの役割

離岸時にボートが桟橋や完璧にぴったりくっついた状態から離岸するのは至難の業です。

陸岸の係留ロープを全て取り外してボートに乗り込んだら、ボートフックで桟橋・岸壁を押し、ボートが桟橋・岸壁から離れる様に手助けします。

完全に桟橋・岸壁から離れれば、フェンダーを取り込んだり、係留ロープをロープロッカー内に片づけるという作業を行います。

これは、走行中にロープが船外に落ちてしまったり、フェンダーが波で暴れてしまったりという事が無いように、確実にクルーの役割として心掛けておきましょう。

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